桜染さくらぞめ
Sakura dye

桜の特徴
染井吉野は日本各地に植栽される、日本を代表する桜。オオシマザクラとエドヒガンの雑種とされている落葉高木で、江戸時代末期に現在の東京都豊島区の江戸染井村の植木屋から「吉野桜」として売り出されたと云われる。明治33年に奈良の吉野桜(吉野山の山桜)と混同を防ぐ為、染井吉野という名前に改められる。1本の樹木から接木、挿し木などの栄養繁殖により育てられたクローン植物で、親種のエドヒガンが1000年も超える寿命のものがあるのに比べ、寿命は60年ほどと云われ短命である。種子から育てれば長寿にはなるが、染井吉野ではなくなってしまう。アメリカ(曙)という品種がそれにあたる。
染井吉野(Prunus × yedoensis ‘Somei-yoshino’)花はほのかに赤みを帯びており、散り際になると中心よりさらに赤くなる。
撮影場所:上野公園 染井吉野(Prunus × yedoensis ‘Somei-yoshino’)
衣笠(Cerasus jamasakura ‘Kinugasa’)
八重紅枝垂(Cerasus spachiana ‘Plena-Rosea’)
八重寒緋桜(Cerasus campanulata ‘Plena’)紫紅色の珍しい桜
御衣黄(Cerasus serrulata ‘Gioiko’)薄黄緑色の珍しい桜
桜染めについて
桜色を布に咲かせるこれまでの桜染めは、桜で染めているかと言えばそうではなく、一般的にはやさしい花の色を表現するのに紅花で赤く染めた布の上に白い布を重ねる“桜重ね”という手法や、茜で薄く染めたものを桜染と言っていました。つまり、桜だけで染めた“桜色”ではありませんでした。その理由は、桜の木の染料の中にはオレンジやベージュが多く含まれていて、ピンク色だけを取り出すことが技術的に不可能だったからです。また、昨年きれいなピンク色に染まった同じ桜の木だからと思って今年も染めると、昨年とはまったく違う色に染まることがよくあるからです。
染井吉野の小枝と染められた綿生地。媒染の違いにより色合いが異なる。
草木染め方法
媒染法を用いて染色をする。
ステンレス製の鍋に桜の小枝や樹皮などを細かくしたチップと水を入れ、少量の米酢を加えて火にかけて沸騰させ煮煎する。
120分ほどしたら布で濾しさらに3~4回程煎液を抽出する。抽出した煎液を1週間ほど寝かすと酸化され、赤みが増してくる。
植物繊維を染める際は豆汁などで下染めをする。先媒染法によるアルミ媒染の後に、染色を何度も繰り返し染め上げていく。一度に濃く染めようとすると黄色や茶色が染色されてしまうので、短時間で何度も染め上げるとよい。アルミ媒染で黄色から桜色、銅媒染で茶色、鉄媒染で紫味がかった灰色から銀鼠色を染められる。
緑葉のクロロフィルを使った緑の染色法や紅葉を使った染色法もある。
花の咲く前の小枝を手に入れたら、その日のうちに細かく刻み、色素抽出に入る。枝の中が黄緑色の状態の生木が好ましい。
奥:直径1㎝以上の枝 手前:直径9mm以下の小枝と蕾。桜の剪定や雪折れなどの枝を使うことが多い。
4回ほどに煮煎じているところ。枝に赤みが出ているのが分かる。この後、水の種類を替え、米酢と天然灰を入れさらに煮煎じる。
3時間ほど煮煎じると次第に赤みが増してくる。この後布で濾して、一週間ほど酸化させる。
抽出された染液で染め上げた色合いはまるで桜の花が布に咲いているよう。
桜染の媒染による色の違い
小枝、蕾 / アルミ媒染(Al)
C00,M27,Y27,K0
R255,G178,B178
樹皮 / アルミ媒染(Al)
C00,M17,Y34,K00
R255,G211,B168
芯材 / アルミ媒染(Al)
C00,M08,Y44,K03
R248,G229,B140
芯材 / 鉄媒染(Fe)
C00,M00,Y03,K13
R221,G220,B214
草木染めの色辞典
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- 桜染さくらぞめ
- Sakura dye
No.1
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No.4
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- Greenalder dye
No.5
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No.6
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No.7
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No.8
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- Sumac dye
No.9
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No.10
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