桜染さくらぞめ

Sakura dye

和名
別名吉野桜
英名Sakura , Yoshino cherry , Cherry Blossoms
学名染井吉野(Prunus × yedoensis 'Somei-yoshino')
科名属名バラ科サクラ属
分布日本全土 アジア 北米 ヨーロッパ
品種山桜 八重桜 枝垂桜 大島桜 陽光 豆桜 河津桜 御衣黄 など 多品種
特徴落葉広葉樹 葉/単葉,重きょ歯 花/白-ピンク色,五花弁 果実/核果
染色部位芯材 樹皮 小枝 蕾
染色時期桜色/1月~3月 黄色灰色/通年

桜の特徴

日本人の心を魅了する桜の花。日本には600種以上もの桜の多様な品種が存在します。

最も有名な桜は染井吉野(ソメイヨシノ)です。3月後半になると、全国各地で染井吉野の開花が知られます。染井吉野は非常に愛されており、その開花時期や花の形は多彩です。染井吉野の3月・4月だけでなく、10月の十月桜(ジュウガツザクラ)、2月の河津桜(カワヅザクラ)、4月から咲き始める八重桜(ヤエザクラ)など、多くの桜が長い期間にわたって美しく咲き誇ります。

現在の国内の桜は、11種の野生種から生まれたものですが、桜は自然環境下で簡単に交雑し、自然な方法で品種が定着しています。染井吉野もエドヒガンザクラ×オオシマザクラの自然交雑から生まれたとされ、天城吉野や伊豆吉野も同様のルーツを持っています。さらに、河津桜はカンヒザクラ×ヤマザクラの自然交雑によるものです。これに加え、数百種の園芸品種が人為的な交雑によって生み出されています。

見聞きする桜の品種は、野生種、自然交雑による栽培種、人為的な交雑による栽培種のいずれかです。切り花として販売される桜の多くは栽培種です。染井吉野は日本全国でよく植えられており、江戸時代末期には江戸染井村の植木屋で「吉野桜」として売られ、明治33年には奈良の吉野桜との混同を避けるために染井吉野と改名されました。染井吉野は接ぎ木や挿し木などで育てられたクローン植物で、親種のエドヒガンザクラが1000年以上も生きるのに対し、染井吉野の寿命は約60年と短いです。種子から育てると寿命は長くなりますが、染井吉野の特性が失われます。これに該当する品種がアメリカ(曙)です。
桜染め 染井吉野 花
染井吉野(Prunus × yedoensis ‘Somei-yoshino’)花はほのかに赤みを帯びており、散り際になると中心よりさらに赤くなる。
桜染め 染井吉野
染井吉野(Prunus × yedoensis ‘Somei-yoshino’) 撮影場所:上野公園 
桜染め 衣笠 桜
衣笠(Cerasus jamasakura ‘Kinugasa’)
桜染め 八重紅枝垂
八重紅枝垂(Cerasus spachiana ‘Plena-Rosea’)
桜染め 八重寒緋桜
八重寒緋桜(Cerasus campanulata ‘Plena’)紫紅色の珍しい桜
桜染め 御衣黄 桜
御衣黄(Cerasus serrulata ‘Gioiko’)薄黄緑色の珍しい桜

桜染めについて

桜色を布に咲かせるこれまでの桜染めは、桜で染めているかと言えばそうではなく、一般的にはやさしい花の色を表現するのに紅花で赤く染めた布の上に白い布を重ねる“桜重ね”という手法や、茜で薄く染めたものを桜染と言っていました。つまり、桜だけで染めた“桜色”ではありませんでした。その理由は、桜の木の染料の中にはオレンジやベージュが多く含まれていて、ピンク色だけを取り出すことが技術的に不可能だったからです。また、昨年きれいなピンク色に染まった同じ桜の木だからと思って今年も染めると、昨年とはまったく違う色に染まることがよくあるからです。
桜染め 染井吉野 枝
染井吉野の小枝と染められた綿生地。媒染の違いにより色合いが異なる。

草木染め方法

媒染法を用いて染色を行います。
ステンレス製の鍋に桜の小枝や樹皮を細かく刻んだチップと水を入れ、少量の米酢を加えて火にかけて沸騰させます。約120分後、布で濾し、さらに3~4回煎液を抽出します。抽出した煎液を1週間ほど寝かせると、酸化が進み赤みが増します。
植物繊維を染める際は、豆汁などで下染めを行います。まずアルミ媒染を行い、その後、何度も染色を繰り返して染色を完成させます。一度に濃い色を染めようとすると黄色や茶色が染り込んでしまうため、短時間で何度も染色を行うのが良い。アルミ媒染によって黄色から桜色、銅媒染では茶色、鉄媒染では紫味がかった灰色から銀鼠色を染めることができます。
また、緑葉のクロロフィルや紅葉を使った染色法もあります。

桜染め方法 小枝
花の咲く前の小枝を手に入れたら、その日のうちに細かく刻み、色素抽出に入る。枝の中が黄緑色の状態の生木が好ましい。
桜染め方法 染井吉野 枝 皮
奥:直径1㎝以上の枝 手前:直径9mm以下の小枝と蕾。桜の剪定や雪折れなどの枝を使うことが多い。
桜染め方法 染井吉野 煮出し
4回ほどに煮煎じているところ。枝に赤みが出ているのが分かる。この後、水の種類を替え、米酢と天然灰を入れさらに煮煎じる。
桜染め 方法 抽出
3時間ほど煮煎じると次第に赤みが増してくる。この後布で濾して、一週間ほど酸化させる。
桜染め方法 色
抽出された染液で染め上げた色合いはまるで桜の花が布に咲いているよう。

桜染の媒染による色の違い

桜色さくらいろ
小枝、蕾 / アルミ媒染(Al)
C00,M27,Y27,K0
R255,G178,B178
花葉色はなばいろ
樹皮 / アルミ媒染(Al)
C00,M17,Y34,K00
R255,G211,B168
淡黄たんこう
芯材 / アルミ媒染(Al)
C00,M08,Y44,K03
R248,G229,B140
灰鼠色はいねずいろ
芯材 / 鉄媒染(Fe)
C00,M00,Y03,K13
R221,G220,B214

草木染めの色辞典

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