蘇芳染すおうぞめ
Sappanwood dye

蘇芳の特徴
スオウ(Caesalpinia sappan L.)はマレーシアやインドなどの熱帯地域に自生しているインド原産のまめ科の小高木です。近似種のブラジル東部原産のブラジルウッド(Caesalpinia echinata)も同様に染色に使用されます。これらの木の芯材には、紅色色素前駆体の〔ブラジリン〕が含まれることから赤色などを染色するのに用いられてきました。弦楽器の弓の素材としても使われています。漢方としては蘇木(そぼく)という名で止血、鎮痛、通経などの作用があります。
ブラジルウッド(Caesalpinia echinata)。マメ科にみられる羽状複葉。長楕円形状。
ブラジルウッド(Caesalpinia echinata)。ブラジルの国名はこの木が多く自生していた事から、ポルトガル語で[赤い木]を意味するブラジルから名付けられたといわれています。
近似種のシビピルナ(caesalpinia peltophoroides) 葉が黄色味を帯びている。
蘇芳染について
日本では飛鳥時代に中国から渡来し、平安時代には貴族に好まれたとても貴重な染料でした。平安時代中期に編纂された格式の〔延喜式〕に示されている様に、天皇が〔即位の礼〕にお召しになる絶対禁色の黄櫨染(こうろぜん)や、禁色の深蘇芳(ふかきすおう)や浅蘇芳(あさきすおう)を染めるのにも使用されてきました。江戸時代になると庶民の色として安価に、広く用いられ、茜や紅花の代わりの赤を染める色として使われるようなりました。また、鉄媒染で染める〔似せ紫〕は、当時高価だった紫根の〔古代紫、本紫〕に代わる紫色として流行しました。
蘇芳染の色素
芯材に含まれる紅色色素前駆体の〔ブラジリン C16H14O5〕は無色だが、酸化すると赤色のキノメタン型の〔ブラジレイン C16H12O5〕に変化する。酸化が進むほど赤が濃くなるとされ、さらに日光の下で染色をするとより濃く染まる。これは光酸化と脱水素酸化の相乗効果で、酸化がより進むためである。酸性にすると赤味がかった色合い、アルカリ性で青みがかった色合いになる。残念ながら蘇芳で染められた色は退光堅牢度は低く、色褪せしやすい色として古くから認識されている。
草木染め方法
媒染法を用いて染色をする。
ステンレス製の鍋に蘇芳の心材や小枝を細かくしたチップと水、少量の米酢いれ、火にかけて沸騰させ煮煎する。20分ほどしたら布で濾し、できた煎液を染色原液として使用する。3~4回程煎液を抽出できる。
植物繊維を染める際は豆汁などで下染めをする。先媒染法によるアルミ媒染の後に、染色を何度も繰り返し濃色に染め上げていく。アルミ媒染で赤系の色、銅媒染で茶色、鉄媒染で似せ紫や黒茶色が染められる。
蘇芳染の媒染による色の違い
芯材 / アルミ媒染(Al)
C00,M73,Y62,K58
R108,G029,B041
芯材 / アルミ媒染(Al)
C00,M46,Y36,K36
R162,G087,B104
芯材 / アルミ媒染(Al)
C26,M96,Y79,K00
R200,G040,B056
芯材 / 銅媒染(Cu)
C00,M44,Y60,K43
R146,G082,B059
芯材 / 鉄媒染(Fe)
C70,M80,Y63,K32
R081,G055,B067
櫨+蘇芳芯材 / アルミ媒染(Al)
C00,M50,Y75,K16
R214,G106,B053
草木染めの色辞典
-
- 桜染さくらぞめ
- Sakura dye
No.1
-
- 檳榔子染びんろうじぞめ
- Betel nut dye
No.2
-
- 蘇芳染すおうぞめ
- Sappanwood dye
No.3
-
- 柘榴染ざくろぞめ
- Pomegranate dye
No.4
-
- 矢車附子染やしゃぶしぞめ
- Greenalder dye
No.5
-
- オリーブ染おりーぶぞめ
- Olive dye
No.6
-
- 茜染あかねぞめ
- Madder dye
No.7
-
- 紅花染べにばなぞめ
- safflower dye
No.8
-
- 五倍子染ふしぞめ
- Sumac dye
No.9
-
- 蓬染よもぎぞめ
- Mugwort dye
No.10
-
- ログウッド染ろぐうっどぞめ
- Logwood dye
No.11
-
- 藍染〔蓼藍〕あいぞめ
- Japanese indigo dye
No.12
-
- 臭木染くさぎぞめ
- Harlequin glorybower dye
No.13
-
- 紫根染しこんぞめ
- Murasaki dye
No.14
-
- 紫鉱染しこうぞめ
- Lac dye
No.15
-
- コチニール染こちにーるぞめ
- Cochineal dye
No.16
-
- 屋久杉染やくすぎぞめ
- Yakucedar dye
No.17
-
- 栗染くりぞめ
- Chestnut dye
No.18
-
- 槐樹染えんじゅぞめ
- Pagodatree dye
No.19
-
- 玉葱染たまねぎぞめ
- Onion dye
No.20
-
- 梔子染くちなしぞめ
- Gardenia dye
No.21
-
- 向日葵染ひまわりぞめ
- Sunflower dye
No.22
-
- 桑染くわぞめ
- Mulberry dye
No.23
-
- 楊梅染やまももぞめ
- Redbayberry dye
No.24
-
- 黄肌染きはだぞめ
- Amurcorktree dye
No.25
-
- マリーゴールド染まりーごーるどぞめ
- Marigold dye
No.26
-
- ミモザ染みもざぞめ
- mimosa dye
No.27
-
- ホップ染ほっぷぞめ
- hop dye
No.28
-
- 梅染うめぞめ
- Japanese Apricot dye
No.29
-
- 珈琲染コーヒー
- Coffee dye
No.30
-
- 緑茶染チャノキ
- Tea dye
No.31
-
- 野薔薇染のばらぞめ
- Eijitsu Rose dye
No.32
-
- 丁子染ちょうじぞめ
- Clove dye
No.33
-
- 桂皮染(シナモン染)けいひぞめ
- cinnamon dye
No.34
-
- 車輪梅染しゃりんばい
- Yeddo Hawthorn Dye
No.35
-
- ブルーベリー染ぶるーべりーぞめ
- blueberry dye
No.36