紅花染べにばなぞめ
Safflower dye
紅花の特徴
エチオピアが原産といわれる紅花は6世紀ごろに日本に伝来しました。花弁には黄色色素サフラワーイエローと紅色色素カルタミンを有し、黄色から紅色まで染めることができます。紅色色素はわずか1%ほどしか含まれていないため、紅花染で染められた紅(くれない)はとても高価なもので限られた人しか着ることができませんでした。
紅花染について
紅花染の色素
紅花の色素には水溶性のサフラワーイエローと、アルカリ性水溶液に可溶なカルタミンがある。紅色を染色する場合、紅色色素であるカルタミンが、アルカリ性水溶液に可溶な性質を利用する。純度の高い紅色色素は、表面が乾くと薄い構造色の膜が張り、玉虫色に輝く。
紅餅について
紅花をそのまま乾燥させた乱花の状態で染色するより、紅餅を用いることで、より濃く紅色を染色できる。
紅餅とは摘み取った紅花を臼と杵で漬く、または足で踏むなどしてよく潰し、一晩発酵させたものを一握りずつ丸め、平たく成形し、日陰で乾燥させたものである。こうすることでより赤みが増し、濃い紅色を染色することができる。また、紅花の収穫時期は夏であるのに対し染色は冬に行われる。紅餅を作ることで染料を冬まで保存することができる。
紅花染めの方法
紅花の染色は冬の寒い時期に行われる。理由は温度が高いと黄色色素であるサフラワーイエローが吸着しやすくなるためである。また、紅色素であるカルタミンは熱に対して不安定な物質である。より純度の高い紅色を染めるため、古くより紅花は寒中で染められてきた。
黄色の染色と紅色の染色とでは方法が異なる。
<紅色の染色方法>
まず紅花をひたひたの水に浸け、一晩放置する。黄色色素が水溶性であることを利用して、一晩抽出する。紅花を濾し布を敷いたザルにあける。この液は黄色を染める染料に使うことが出来る。漉した紅花を水で洗い、さらに黄色色素を流す。
ある程度黄色色素を洗った紅花ををアルカリ性水溶液に浸す。約一晩放置し、紅色を抽出する。次に、紅色を抽出した液を濾し布を敷いたザルにあけ、紅花を絞る。そこにpHを7〜8になるように酢を加えて調節する。ここで、被染物を投入し浸し染めをする。その後再び酢を加え、pHを6.5に調節し、浸し染めをする。
最後に酢を水で20%に希釈した水溶液に10分をど浸し、酸止めをする。よく水で洗い、日陰で乾す。
<より純度の高い紅色の染色方法>
上記の染色方法で絹を染めると、黄色色素の混入した紅色が染色される。より純度の高い紅を染めるには、一度木綿の布にカルタミンを吸着させる必要がある。
アルカリ性水溶液に紅色を抽出する。花を漉した液に酢を加え、pHを7〜8になるよう調節する。ここでカルタミンを吸着させる為の木綿布を浸し染めする。手順は上記と同じように行い、最後に酢止めしよく水で洗う。こうして紅色を吸着させた木綿布を〔紅木綿〕という。
紅木綿をアルカリ性水溶液に浸し、色素を再抽出する。そこに酢を加え、pHを7〜8になるよう調節する。被染物を投入し浸し染めをする。その後再び酢を加え、pHを6.5に調節し浸し染めをする。
最後に酢を水で20%に希釈した水溶液に10分をど浸し、酸止めをする。よく水で洗い日陰で乾す。
こうすることで、より純度の高いカルタミンの色素を染色できる。一度の染色では紅は薄く、何度も行程を繰り返すことで濃い紅色に染色できる。
<黄色の染色方法>
媒染法を用いて染色する。植物繊維を染める際は豆汁などで下染めをする。先媒染法によるアルミ媒染の後に、染色を何度も繰り返し濃色に染め上げていく。
紅花をひたひたの水に浸け、一晩放置する。黄色色素が水溶性であることを利用して、一晩抽出する。紅花を、濾し布を敷いたザルにあける。漉した花には紅色の色素が残っているので、捨てずに取っておく。
漉した液を加熱し、沸騰させる。再び濾し布を敷いたザルに液をあけ、不純物を取り除く。漉した染料液を火に掛け、被染物を投入し浸し染めをする。最後によく水洗いし、日陰で乾かす。
紅花染の色の違い
乾燥花 / 酸
C00,M55,Y66,K10
R230,G103,B078
乾燥花 / 酸
C00,M64,Y57,K09
R233,G084,B100
乾燥花 / アルミ媒染(Al)
C00,M18,Y66,K02
R250,G206,B085
乾燥花 / 酸
C00,M50,Y30,K00
R255,G128,B179
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