草木染めについて 「顔料と染料の違い」

モノつくりのこと
2015.9.30

今回は染料と顔料のお話です。

私の「草木染め」に使う染材料ですが、大きく分けると「顔料」と「染料」に分けることが出来ます。
簡単に言うと
「顔料」とは水に溶けない色素
「染料」とは水に溶ける色素のことを呼びます。
水に溶けるということは水の分子よりも色の分子のほうが軽いということです。
「顔料」と「染料」によって草木染めの方法が大きく変わってくるのでとても重要です。

見分け方は簡単です。
「顔料」は水で希釈すると濁った色の液体になり、時間が経つと沈殿します。
「染料」は水で希釈すると透明感のある色のついた液体になり、時間がたっても沈殿することはありません。

写真で説明すると、、、

茜
1) 左:赤土の粉末(顔料) 右:インド茜のチップ(染料)になります。

天然染料と顔料の違い
2) 左:赤土をさらに細かくすりつぶし、湯に溶かしたものです。
   右:インド茜のチップを水で煮煎じ、布で濾した染液です。
   一見どちらも水に溶けているように見えます。

天然染料と顔料の違い その後
3) 15分ほどそのままにしておくと、、、
   赤土は沈殿してしまい水と分離してしまいます。
   茜は長時間置いても変わりません。このことから
   赤土=水に溶けない=顔料
   茜=水に溶ける=染料
   ということが分かります。

草木染めは天然のものなので「天然顔料」「天然染料」と呼ばれます。
実際に草木染めに使用する材料を区別すると

「天然顔料」
 ・土
 ・泥
 ・石
 ・墨
 ・貝灰

「天然染料」
 ・桜
 ・茜
 ・矢車附子
 ・刈安
 ・珈琲
 ・紅花
 ・その他の植物を煮煎じて抽出した染料など

中には例外もあります。
藍や介殻虫、柿渋などは両方の性質を併せ持っています。
藍は酸化した状態だと「顔料」ですが還元した状態だと水に溶けるという性質があります。
介殻虫の色素は普段は「顔料」ですが酸性になると水に溶ける性質があります。
柿渋は普段は「染料」ですが乾くと「顔料」のように水に溶けなくなります。

先述したように「染料」「顔料」どちらなのかで染色方法は変わってきますが、
それぞれに特徴があります。

「天然顔料」
 ・染めた布のが硬くなる。(重くなる、ガサガサする)
 ・摩擦堅牢度が低い(擦れると色落ちしやすい)
 ・日光堅牢度が高い(太陽光で変色しにくい)
 ・色が不透明
 ・色数が少ない
 ・比較的染めやすい(擦り付けるなどの単純な染色法)

「天然染料」
 ・繊維に結合するので染めた布の質感が変わりにくい(重くならない)
 ・日光堅牢度が低い(太陽光で変色してしまいやすい)
 ・摩擦堅牢度が高い(擦れても色落ちしにくい)
 ・色に透明感がある
 ・色数が豊富にある
 ・染めるのに技術がいる(染色工程が多い)

世界的にも歴史が古いのは「天然顔料」で、現在もアフリカ諸国や東南アジアでも染められています。
「顔料」は南半球で染められることが多いのですがその理由は「太陽光に強い」ことです。
なぜなら土や石などの顔料はもともと太陽にさらされているからです。
藍や介殻虫などは「天然顔料」の仲間になりますが日光堅牢度はさほど高くはありません。

「天然顔料」は擦れて色が落ちてしまいがちですが、
使い込めばデニムのように味のあるいい質感になります。
「天然染料」は生地の風合いがそのまま生きるので肌に触れる下着や靴下、ニットなどに向いています。
それぞれの特徴を生かしながら製品や素材にあった染を選択する事も大事なのです。

MAITO DESIGN WORKS
小室 真以人

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